So-net無料ブログ作成
検索選択

「大地へ」

大崎タイムス連載・2015.11.28掲載より

「大地へ」Vol.39

おまえの
内なる情緒を
これほどまでに
知らされたのは
あの時がはじめて

燃え滾る核心を
おまえはいつも
隠しているから
私たちはただ狼狽え
そして泣いたのだ

穏やかな外殻の
その海底に地表に
新たな足跡を
生き物に作らせて
記憶を残させたのは
なぜだ
そのすべての行為を
許すのは 
なぜなのだ

山を見る
海を見る

幼い頃から眺めた
故郷の景色を
ずっと変わらないと
わたしは愚かにも
思っていた
山は山ではなかった
この入江も
その半島も
あの沼も
悠久の時を持つ
おまえの内なる情熱が
ある時に残したものだ

そのくせ
命を育むおまえを
わたしは
どう思えばいいのだ

これだけは言いたい
おまえが見守った命も
失わせた命も
この地で
繰り広げられた
光の営みなのだ

わたしはこれからも
ここで生きてゆく
そしてこの風景を
愛し続けるだろう

大地よ
それでいいだろう
大地よ
おまえと向き合う
覚悟はできている
大地よ
なにか話してくれ

nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

「意志」

大崎タイムス連載・2015.11.21掲載より

「意志」Vol.38

私の中に紛れ込み
私を擦り抜ける君
私が自ら欲しても
私は君を
思い留めること
すらできない

君の強靭な精神
君を抱きかかえる私
君が自ら欲してこそ
君は私を
道程の石ころにして
いるのだ

ビロードの襞から
絞られた滴
ぴたりと唇に触れた
君の悪戯は
私の心を濡らす

私には意志がない

君を器に捕らえても
そこに蓋をしても
いつしか空に
どうせ帰るのだろう
ごくりと飲み干しても
いつしか川を渡るのだ

私のちっぽけな
時の中で
私は君を失い
枯れ葉になるのだ

雨は、川に、
海が、雲を

永延の君
氷河の君

君には意志がある

なぜそれほどまでに
旅を続けられるのだ

なぜそれほどまでに
だれかに
捕らわれないのだ

でも君に云いたい
私がこの時の中で
あの人を
愛したのは

私の意志なのだ

説明のつかない
確かな
私の意志なのだ

「残照」

大崎タイムス連載 2015.11.14掲載より

「残照」Vol.37

繋がれし
掌解きて
はしゃぎ行く
振り返る先
御婆と夕焼け

吾はまた
子犬のように
かけ寄りて
なにくわぬさま
その手を握る

駄菓子持て
黙ったままの
どちらより
云うともなしに
ただに繋げる

その手の温もり

無垢なる愛の賜りに
三つ子の吾の秋の風

そのすぐ後に
急逝せらる
いまなお残る
その湿温に
もうひとたびの
掌握の
叶わぬことと
秋の風

繋がれし
掌強く
握りきた
その柔らかさ
御婆の

吾はなお
子犬のように
擦り寄りて
なにくわぬさま
もんぺの揺れる

おねだり終えて
家までの道
終わりになるとも
知らぬまま
いままだ残る
温もりを

無垢なる愛の
賜りに
絵画のふたり
秋の風

いまこの時に
おばあちゃん!
あの日の優しさを
今更に思います


「明日という未来」

大崎タイムス連載・2015.11.7掲載より

「明日という未来」Vol.36

未だ来ぬ時が
未来であるのなら
私はここに突っ立って
そいつが来るのを
待っていよう

明るい日の訪れが
明日であるのなら
私はここを飛び越えて
そいつを迎えに走ろう

誰も観たことのない
その揺らめきを
誰も嗅いだことのない
その漂いを
いまの私の眼底と
鼻腔が想像のうちに
それを捕らえるのなら
掴みどころのない
その未来に
私は希な望みを
描いているに違いない

臥したるのちに
生まれくる日輪を
雨泣の深みから
訪れる静寧を
明日という未来に
その蘇りを託すのだ

拡散の宇宙と
収縮の宇宙
流れ続ける時と
解かれ続ける時
降り注ぐ未来と
積み重ねられた過去

明日とは私の命が
母の胎内に帰るような
遡源の未来であり
己の過去に向かう
道程なのかもしれない

未来に美しいものを
求索する心が
教えてくれている
ようでしかたない

私のいまあるところは
未だ来ぬ未来ではなく
過ぎ去った
過去でもない

明日は未来と過去を
私に
与えてくれるだろう
待たずとも
追いかけずとも

明日は朝陽を
思う存分にいただこう



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感