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「忘れえぬ夕陽」

大崎タイムス連載・2016.4.30掲載より

「忘れえぬ夕陽」VOL.61

忘れたことはない
曇りガラスに映った
あの夕陽の色を

夢中で過ごした
職場の初日のこと
穏やかな茜の希望が
ふいに窓に現れた
その見事な色と
その頼もしい輝きに
ただに圧倒された

職に就いたのだ
いまわたしは
ここにいるのだと
気づかせてくれた
あの夕陽
そのとき抱いた
感動と決意を
忘れたことはない

忘れたわけではない
その職を辞した後も
あの日の窓
胸の高鳴りと
自らへの期待

春の夕暮れに
差した西陽は
それは温かに
始まりを
告げてくれた

忘れまい
曇りガラスに映った
あの夕陽の色を
わたしはそこから
始まったのだから

わたしときたら
もうその職にない

あの使命は消えたのか
そんな自責が
わたしに降りかかる

忘れてなどない

どうしてかって
いまこのときに
あの夕陽が現れたのだ

穏やかな茜の希望が
いまもここにあると
わたしに
知らせにきたから



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書評を賜りました(お知らせ)

詩集「なにもかも言葉の化石」に書評を賜りました。
紹介させていただきます。

また仙台市の金港堂本店さんでの取扱いが先週より
開始されました。お知らせいたします。

河北新報「東北本棚」2016.4.25付
河北新報4.25.jpg
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「桜の花びら」

大崎タイムス連載・2016.4.23掲載より

「桜の花びら」VOL.60

昨日の花びらのうえに
今日の花びらが落ちた

びゅうっと
時代絵図のような
桜の雲が動きだし
おとといの花びらが
顔を見せた

東からの伝言が
私の足元に届けられ
過去は今日に戻され
花びらが手紙になった

明日に舞い散る花は
あの日の傷を
癒してくれた涙

今日に舞った花は
あの日の別れを
教えてくれた風

昨日に散った花は
今日の出会い
約束していた言葉

昨日の花びらのうえに
今日の花びらが落ちた

ぐわんぐわんと
屈まるように
桜の河が動きだし
悠久の記憶が
生き物になる
今日は過去へと進み
昨日が未来に放たれる

桜の花の散る公園で
私になる前の
私と出会い
私でなかった
私と別れ
私は
私であることを知る

昨日の花びらのうえに
今日の花びらが落ちた

ぐるりぐるりと
渦巻くような
桜の雨が動きだす

桜の花の散る公園で

花びらになる



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「光の言葉」

大崎タイムス連載・2016.4.16掲載より

「光の言葉」VOL.59

春と修羅.jpg

カーテンの隙間
よく見つけたものだ
そこを目がけて
来たんだね

白い壁紙に貼られた
その言葉だけを
目がけてきたんだね

自分で掲げた紙片を
忘れていた決意を
いつからか
詠まずにいた

読み返したよ
君のおかげで

心に光を中てて
君は私を促した
今朝の目覚めのために

カーテンの隙間
よく見ると
もう一筋の
細い光線がある

雑然の机に埋もれた
その一冊を
照らしたね

自分で求めた依代を
忘れていた背表紙を
いつからか
尋ねずにいた
読み返したよ
君のおかげで

嘘に光を中てて
君は私を叱った
昨夜の眠りを知って

紙片には
「滴る水のごとく」
背表紙は
「春と修羅」

光に言葉があることを
いま知りました

光に私がいたことを
初めて知りました

昨日と同じ朝に




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「新しい朝には」

大崎タイムス連載・2016.4.9掲載より

「新しい朝には」VOL.58

ハナカイドウ.jpg

新しい朝には
新しい呼吸がある
昨日までとは違う
新しい呼吸だ

踏み出すことの
決意に満ちた
息遣いがある

自らの呼吸を
自らの意思で
廻している
新しい朝がある

陽が昇り来る
その始まりの
確かな実感を
頬に感じる朝がある

この道を選んだ
その意味が
私を奮い立たせる
静かな爆発がある
鮮やかな風景がある

心の内から芽生える
きゅんとする
新しい朝

鳥よ、歌え!
花よ、咲け!
いよいよ始まるのだ
そう叫びたい朝

地面をどんどんと
何度か踏んで
ぎゅーっと背伸び

昨日の朝にも
新しい呼吸があった
そうにちがいない
それでもその呼吸を
覚えていない
踏み出すことに
ためらいを残して
いたからかもしれない

誰かに呼吸を
誰かの意思で
廻されたような
朝だったように

この朝を呼吸する
新しい呼吸
わたしの息遣い
わたしの役割



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「あなたの香り」

大崎タイムス連載・2016.4.2掲載より

「あなたの香り」VOL.57

振り返る
確かに感じた
行き過ぎたこの場所で
振り返る
あの日のあなたが
いるような気がした

振り返る
朧に感じた
行き過ぎたその角で
振り返る
あの日の沈丁花が
咲いている気がした

わたしに残された
消えない焦がれは
美しいままに
胸中の片隅で
忘れたふりして
時を止めている

振り返る
確かに感じた
雨上がりのその風に
振り返る
あの春のわたしが
水たまりを踏んだ

振り返る
朧に感じた
夏休みのその朝に
振り返る
あの日の朝霧が
ラジオ体操の香り
バリのデンパサール
ニューヨーク
ケネディー空港の…

言葉にできない
深呼吸したそのとき
一瞬でわたしを染めた
潜在化された絵

香りという感情は
美術館の収蔵庫に
仕舞われてある
絵画のように

心のひだに
彩そのままに
仕舞われている
心模様なのだ

あなたの香り



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