So-net無料ブログ作成
検索選択

「見知らぬ子」

大崎タイムス連載詩・2016.5.28掲載より

「見知らぬ子」VOL.65

見知らぬ子がいる
近所の公園
ベンチにひとり
座っていた

どこから来たの?
下を向いて
棒切れを握って
深くかぶった帽子
顔が見えない
でも泣いているのだ

見知らぬ子がいる
近所の公園
ブランコが一つ
まだ少し揺れている

どこに来たのだろう
目を見開いて
隅々を探す
花壇の花が違う
似ているけれど
近所の公園ではない
私がここに
迷い込んだのだ
ここはどこなのだろう

あの子が顔をあげて
こちらを見た
頬の涙をぬぐいながら

見覚えがある
私はこの少年を
知っている
それどころではない
なぜ泣いていたのかも
知っている
公園のラッパから
夕刻を告げるチャイム
町のあちらこちらに
響き渡って
だいじょうぶだよ!
私の声をかき消した

あの子には
私が見えないようだ

ゆっくりと薄墨になる
空を見あげると
棒切れをそこに置いた

あの日の私の家に
あの少年は帰るのだ

足元の砂に書いた
「ぼくがわるいの?」
その文字を残して



nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

「聞いた言葉」

大崎タイムス連載・2016.5.21掲載より

「聞いた言葉」VOL.64

あの昼の木洩れ日
それは美しかった
あのとき感じた
幼葉の緑の風は
いまになっても
思い出します

裏山に基地
子供のころ
友と二人で作った

何をしたわけではなく
二人だけの居場所
それが楽しかった

ある日の夕暮れ
時を忘れた僕たちは
木々の声を聞いた

どこからか風が吹き
カラスが鳴き止んで
僕たちは
木々の声を聞いた

あの夕暮れの木洩れ日
それは奇妙だった
あのとき確かに感じた
のだけれど
僕たちはのちに
忘れたことにしていた

栃の樹と栗の樹と
そこに綱を張って
ぼろぼろのコザを
家の倉庫から持ち込み
作った基地で
その樹が話した
神妙な言葉

彼は僕を見たし
僕も彼を見た
そして二人とも
黙ったまま見上げた
だから間違いない

彼が何を聞いたか
僕は聞かなかった
聞けなかった

夕焼け過ぎの
灰色の空には
無数の枝が這っていた

その空を眺めながら
「生きているんだ」
彼に言わなかった
僕が聞いた言葉



nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

「音の始まり」

大崎タイムス連載詩2016.5.14掲載より

「音の始まり」VOL.63

岩沼市2016.5.12.jpg

鳥が歌う
晴天の空に
キキツキージョッ
向こうの竹やぶで
チキツキィー
昨日まで
どこで暮らしていたの
ホーホケキョッ
高らかな声
澄み渡る木霊

蛙が歌う
日が暮れた里に
ガーケーガーガー
外灯の下 あの辺り
グワギッグワ
さっきまで
どこで眠っていたの
ケーッケーッ
力強い旋律
天と地に共鳴

田植えの頃だ
土は興された
水は張られた

種に脈動が生まれ
芽と根を伸ばす
そのときがきたのだ

眠っていた
耐えていた
この日のために

アメンボが長い手で
指揮をすると

生まれたての
ザリガニが一丁前に
ハサミを振り上げ
石ころだったタニシが
のっぺりと動き出す

ドジョウは水路の
みなもを突き
メダカが水田に
登り来る

田植えの頃だ
土は興された
水は張られた

キキツキージョッ
キキツキージョッ
チキツキィー
私の中の鳥が歌う



nice!(0)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

「端午と立夏」

大崎タイムス連載・2016.5.7掲載より

「端午と立夏」VOL.62

青い鯉のぼりプロジェクト2016.5.5.jpg
写真「青い鯉のぼりプロジェクト」より)

私の瞳 なにを見る
私が見つけた
私が見つけられた
そこに映ったもの
映し出されたもの
私が選んだもの
私が選ばれたもの
そのどちらかが
いまはわからない

私の瞳 なにを見る
私が触れた
私が触れられた
ここに手を伸ばす
目の前に現れたもの
私が見つけた
私が見つけられた
そのどちらかが
どちらでもいい

鯉のぼり
空を泳いでいる
子どもを探している
親を探している
一斉にあちら向いた
そうだ きっとそう
そっちにいるはず

鯉のぼり
身を借りている
あの子が あの人が
風になった姿を
私に知らせるために
身を借りている
鯉のぼりの躰

菖蒲の剣
この川端に
男子の君は
あの日のまま
何歳になりましたか
5年経ちましたね
今日は立夏
端午の節句

私の瞳 なにを見る
私の瞳で
私は君に
私が見ている心を
見せている
あなたを視ていると

私が見つけたものと
私が見つけられたもの
そのどちらでもなく
そのどちらでもあり



nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感