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「風の向き」

大崎タイムス連載・2016.6.25掲載より

「風の向き」VOL.69

どこで生まれたのか
どうして生まれたのか
横切るこの風に問う

あなたには
目指すべき風景が
確かにあったのです

ここでいいのか
どうして止んだのか
蝶の縋った紫の
スミレの花の先
その揺れを
収めるように
あなたは溶けた

生まれたことに
意味があるのなら
その瞬間に
この光景は
すでに示されていた
だからここに来た

あなたには
目指すべき場所が
確かにあったのです

その納得は
謀ではない
その合点は
双方にあるのだ

そのような偶然を
あなたを観て
思うのです
偶然ではないと

風の向き
目指すべき場所
待っている
誰かがそこにいる

風の向き
溶けるべき場所
待っている
あなたの約束がある

私はここに突っ立って
風を身に受ける

いま揺れている
あそこの葉っぱも
その風景だ

私はここに突っ立って
ただ風を観る




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「網の輪郭」

大崎タイムス連載詩・2016.6.18掲載より

「網の輪郭」VOL.68

膝丈まで伸びた
草原を行く
ずわん ずわん

歩をすすめる
足に鉛
ゆっくり前に
母の呼ぶ方へ
ずわん ずわん

しばらく行くと
草丈の短い場所が
突然あらわれた

夏至だ
ここだけに
光が集められた
それが証拠だ

シロツメクサの群生
風の眠る場所
姿なき鳥の声
夏至だ
いま辿り着いた

そうだ
蝶を捕まえに来たのだ
カゴは母が持っている
どこに行った?
「虫カゴちょうだい」
また草原に入る

膝丈まで伸びた草
ずわん ずわん

お母さん
ずわん ずわん
声がない
ずわん ずわん

いつの間にか
網のなくなった
虫取り網
その竹を握っている

針金だけの輪郭で
蝶を捕まえる

そして空のカゴに
そっと入れた

母の声がする
そちらの方に
ずわん ずわん




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「雨の中の私」

大崎タイムス連載詩・2016.6.11掲載より

「雨の中の私」VOL.67

晴れた日に
友を思う
自転車に乗って
大声で語り合った
放課後の川沿いの道

雪の日に
祖父を思う
静まった朝に
昨夜からの雪を掻く
ただ一つの営みの音

風の日に
姉を思う
寝付けない夜
絵本を読んでくれた
4歳上の頼もしき声

雨の日に
あなたを思う
一つの傘に
寄り添える幸せを
教えてくれた午後

雨の日が
続きます

育まれている
木が
育まれている
心が
育まれている
雨が

流されてゆく
時間が
呼び戻されてゆく
記憶が
呼び覚まされてゆく
明日が

雨が降っているから
あなたを思う
雨が降っているから
雨音に心を傾ける

家を駆けだした日
傘をさしむけた日
口を大きく開けて
待ち受けた日

雨の中の
あの日の私

雨が降っているから
私が濡れる



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「か弱き強さ」

大崎タイムス連載詩・2016.6.4掲載より

「か弱き強さ」VOL.66

4.jpg

か弱き芒の
その棘の鋭さよ
麦の穂先に伸びた
幾多の希望が
そこにある

秩序良く広げられ
ハリネズミになった
一つ一つの刺は
空の四方を指している
力強き芒の
その美しさよ

もうあなたは
誰かに植えられた
種ではない
あなたは
生きている

風に揺れる
しなやかな弱さよ
その折れない
柔軟な強さよ

もうあなたは
誰かに植えられた
種ではない
あなたとして
生きるのだ

その房の花びらに
風を伝えるのだ
言葉を与えるのだ

あなたを育てた
硬い種に
風と言葉が
託されていたように

柔らかであることの
本当の価値は
へし折ることのできぬ
柔らかな
未来と希望だ
成長できる力だ

風に揺れる
あなたに
それを教わった

か弱き麦の芒が
風を抱いている

確かな未来が
そこにある



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